日本では、赤ちゃんが生後1カ月目を迎える頃、赤ちゃんを連れてお宮参りをします。
「お宮参り」とは、土地の神様を訪れて
- 赤ちゃんの誕生を感謝し
- 健やかな成長と長寿を祈り願う
日本古来の儀式です。現代では、赤ちゃんが参加する初めての家族の行事とされることも多いですね。
お宮参りは、古くからのしきたりにのっとって行われる伝統行事ですから、いざ、お宮参りに行くとなれば、気になることもたくさんあります。
なかでも、やはり知っておきたいのがお金のこと。「初穂料」という言葉を耳にしたことはありませんか? 神社にご祈祷をお願いしたときに謝礼としてお供えする金銭を「初穂料」と言いますが、具体的なことは知らない方が多いようです。
初穂料ってなに?
いくら用意すればいいの?
お金は何に包めばいいの?
封筒には何か書かないといけないの?
こういった疑問がいくつも浮かぶかもしれませんね。今回はそんな「初穂料」について詳しくお話していきます。
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目次
お宮参りの初穂料はご祈祷の謝礼
赤ちゃんが生まれてひと月もすると、赤ちゃんを連れて神社にお参りに行きますよね。これを「お宮参り」または「初宮参り」と言いますが、実際どのような儀式なのかご存知でしょうか?
最初にもお伝えしたように、お宮参りは赤ちゃんの誕生のお祝いと、成長と幸せを願って土地の神様にお祈りする行事です。一般的には生後30日過ぎた頃、赤ちゃんとお母さんの体調や、お天気に合わせておこなわれることが多くなっています。
ただ、お宮参りの時期というのは地方によっても違い、北海道や東北では冬場を避けて暖かい時期まで待つのが一般的ですし、長いところでは110日目におこなう地域もあるなど、必ずしも30日頃にする決まりではないのです。
お宮参りはもともと、新たに家族となった赤ちゃんを土地の神様(氏神)にお披露目し、氏神様を祀(まつ)る一族(氏子)の一員として認めていただく儀式でした。
その意味からすれば、赤ちゃんが生まれ、これから育っていく土地の神社でお参りするのが一番ですが、氏神・氏子の観念が薄れた現代では、あまり気にする必要はなくなっています。
お母さんが里帰り出産した先の神社に行かれる方もいますし、お父さん側の一族が代々お参りをしてきた神社でお宮参りをするという方も。
ただ、土地の神様に「赤ちゃんの健康と成長をどうぞお見守りください」と祈願するわけですから、縁(ゆかり)のある地域の神社でお参りしたいですね。
また、行事ごとには土地や親族の慣習がある場合もありますから、どの神社に行けばいいか迷ったら、ご家族や親せきに相談してみるのもいいですよ。
正式なお宮参りでは、神社にご祈祷(きとう)を申し込み、祝詞(のりと)をあげていただきます。このとき、ご祈祷の謝礼として納めるお金が「初穂料(はつほりょう)」です。
ちなみに、お寺でもお宮参りのご祈祷は受けられます。お寺なので「お宮」とは言わず「お初参り」、初穂料は「ご祈祷料(お布施)」などと名称に違いはありますが、内容はあまり変わりません。お寺でお参りをしたい場合は、お初参りのご祈祷を受け付けているか問い合わせしてみましょう。
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お宮参りの初穂料と玉串料の違いと使い分け
先ほど説明したように、初穂料は神社で祝詞やお祓いを受ける際に納める謝礼のことで、「玉串料(たまぐしりょう)」と呼ばれることもあります。ご祝儀袋(のし袋)に包んで渡すのが一般的で、のし袋の表書きには「初穂料」「玉串料」「御祈祷料」などと書き添えることになっています。
ここでは、初穂料と玉串料の違いや、どのように使い分ければいいかを詳しくお話していきます。
初穂料
「初穂」とは、その年の最初に実った稲穂や野菜などのこと。収穫の感謝と豊作を願い、最初に収穫した農作物を神様にお供えする習慣からきています。
初穂は、実りに対する神様への感謝を表すものですが、時代とともに「神様への捧げ物」という意味合いが強くなり、現代では、初穂(=農作物)の代わりとして納める金銭を意味するようになりました。
初穂料は、お宮参りの他にも七五三、結婚式、厄除け祈願、お札授与など、神社でおこなうさまざまな儀式で使われます。ただし、成り立ちを考えると分かるように、初穂には「感謝」の意味が込められていますので、神道のお葬式には不向きです。
玉串料
一方、「玉串」は榊(サカキ)の枝に稲妻形の切り紙(紙垂:しで)を付けたもので、神様への供物として神社でのさまざま儀式に使われます。神主さんがお祓いするときに手に持っている紙の付いた植物と言えば、イメージできるのではないでしょうか。玉串料は、その玉串の代わりに納める金銭のことを言います。
玉串料も初穂料と同じく、お宮参りの他、七五三や結婚式、安産祈願のようなご祈祷でも使われます。初穂料との違いはお葬式にも使えること。そして、お守りや神札の授与にはあまり使われません。
要するに、お宮参りでは「初穂料」と「玉串料」のどちらも使えます。表書きをどちらにするかは参拝する神社に合わせましょう。どちらか分からなければあらかじめ問い合わせるか、「御祈祷料」「御礼」と書き添えても大丈夫です。
お宮参りの初穂料の用意が難しい場合の対処
「初穂料」なんて言葉を初めて知った、という方の中には
お宮参りは神社でもお金がかかるの?
初穂料って払わなくてはダメ?
そう思われた方もいるかもしれませんね。
もし、神社で正式なお宮参りをしたいのであれば、ご祈祷を申し込み、神主さんなどに祝詞をあげていただくことになりますので、もちろん必要です。
お宮参りは赤ちゃんの初めての晴れ舞台。わが子の成長や幸せを、きちんと神前で儀式として祈願したいという気持ちは、親ごさんとしてすばらしいものです。けれども、お宮参りで一番大切なのは、赤ちゃんが無事この世に生まれた感謝と、今後の健康と成長を心から願うことだということを忘れないでください。
初穂料の用意が難しい場合
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お宮参りの初穂料の相場は5千円から1万円
初穂料は商品やサービスの対価とし支払うものではないため、基本的に料金は定められていません。しかし、実際のところ金額がはっきり書かれていないと、一体いくら用意したらいいのかと悩んでしまいますよね。
ご祈祷料は「お気持ちで」という姿勢の神社も少なくありませんが、一般的に初穂料の相場は5000円~1万円と言われています。迷ったときには5000円~1万円の間で用意するとよいでしょう。
近年では、「5000円以上」や「1万円から申し受けます」といった目安が示されていたり、お守りや絵馬といった授与物を含めるなど、内容によって料金が異なるプランをいくつか用意している神社も増えてきました。
ご祈祷料の金額に迷ったら、そういったプランが設定されていないか神社のホームページなどで確認したり、お宮参りの予約をする際に問い合わせてみましょう。
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お宮参りの「のし袋」に関する5つのお作法
初穂料を神社に納めるときは、現金をご祝儀袋(のし袋)に包んでお渡しします。袋の種類や表書きの書き方には決まりがありますので覚えておきましょう。
のし袋の理想は水引き
ご祈祷を申し込んだときに納める謝礼(初穂料)には、水引きのあるのし袋を使用するのが理想的です。
水引は紅白の蝶結び(花結び)を選びましょう。結婚式のような「一度きり」を強調するお祝いには「結びきり」の水引を使いますが、一般的なお祝いでは何度も結び直せる「蝶結び」で、「何度あってもよいお祝い」を表します。
なお、蝶結びの水引があまり使われない地方もあります。行事に関するお作法は、その土地や一族の慣習を尊重するのが好ましいので、その地域のルールなどに合わせるとよいでしょう。
また、初穂料を包むのに無地の封筒を使っても問題はありません。けれども、初穂料は神様への捧げ物です。敬意を示す意味でも、あらかじめ用意しておきたいものですね。
のし袋の表書き3つの注意点
のし袋には表書きをします。書き方は――
- 水引の上段:「御初穂料」または「初穂料」
- 水引の下段:お宮参りを受ける赤ちゃんの名前(フルネーム)
- ※下段の「名前」は「初穂料」より若干小さめに書くとバランスが取れます。
読み方が難しい名前であれば「ふりがな」をふっておきましょう。
初穂料を入れる中袋の書き方
大抵の場合、のし袋にはお札を直接包むための中袋(中包み)が付いています。まず、中袋表面の真ん中に金額を「金 ○○円」のかたちで書き入れます。
裏面左側に、現住所とご祈祷を受ける赤ちゃんの名前を記入すればより丁寧ですが、申し込む際にも記載する内容ですので、必須ではありません。
中袋表面の書き方のポイントは、金額の数字を大字(旧字)で書くこと。
- 一 → 壱
- 二 → 弐
- 三 → 参
- 五 → 伍
- 六 → 陸
- 七 → 漆
- 八 → 捌
- 千 → 仟
- 万 → 萬
- 5000円ならば 金 伍仟円
- 1万円ならば 金 壱萬円
市販品ののし袋には、あらかじめ附属の中袋に金額が印刷されているものもあります。購入前に、包む金額と違っていないか確認しておきましょう。
初穂料のお札の向き
初穂料を包むときには、お札の裏表と向きに注意しましょう。
お札には表と裏がありますね。肖像が印刷されている面が表。お札は表側を上に、そして肖像が袋の口側にくるようにして入れます。仮に1万円を包む場合、中袋から取り出したときに福澤諭吉が最初に見えればOKです。
もちろん、お札は全て同じ向きにそろえます。お札を包んだ中袋は表面を上にして、のし袋に入れましょう。
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のし袋の表書きは筆ペン
表書きは、毛筆または黒の筆ペンで書くのがベストです。お宮参りはお祝い事。濃く太い字は「慶事」を表します。
筆ペンなんて使い慣れてないし……という方は、フェルトペンや太めのサインペンでも大丈夫。ただ、ボールペンや万年筆のような細字の筆記具はあまり好ましくありません。
大きくしっかりとした字で書いてくださいね。
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初穂料でよくある3つの疑問
最後に、初穂料についてよく聞かれる質問をQ&A形式でお答えします。
初穂料は新札でないとダメ?
A:初穂料は神様に捧げるものですから、扱いには心を配りたいものです。新札でなければいけない決まりはありませんが、マナーとして、できれば新札を用意したほうがいいでしょう。銀行設置の両替機では新札が指定できるので、比較的、新札を手に入れやすいですよ。
どうしても新札が用意できなければ、手持ちの中でも比較的きれいなお札を選んでください。極端に汚れていたり、端が折れていたり、しわが寄っていたりするお札は避けましょう。
初穂料は誰が用意するもの?
A:特に決まりはありません。一般的には赤ちゃんの両親が用意しますが、地域や親族の慣習によっては異なる場合もあるでしょう。
しきたりにのっとって正式なお宮参りをするとなれば、衣装や記念写真なども含め、それ相応の費用がかかります。祖父母がお宮参りの参加を希望している場合もあるでしょうし、費用については祖父母も含めた家族一同で相談してみるといいかもしれませんね。
初穂料はいつ渡すの?
A:初穂料をいつどこで納めたらいいのかと悩まれる方、意外に多いようです。
初穂料は神社でご祈祷を受ける際の謝礼。そして、ご祈祷には申し込みが必要です。つまり、申し込みの際にお渡しする流れということになりますね。
- 神社についたらお宮参りの受付場所(授与所)へ向かう
- 受付で申込書を受け取り、必要事項を記入する
- 受付で申込書とともに初穂料を渡す
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まとめ
「初穂料」のポイントは次の4点です。
お宮参りで赤ちゃんが受けるご祈祷の謝礼
相場は5000円~1万円
できれば新札を用意し、のし袋に包む
お宮参りの受付所で申し込むときに渡す
お宮参りの初穂料について詳しくお話してきました。初穂料という言葉を聞いたことはあったけれどよく分かっていなかったという方も、ご理解いただけたのではないでしょうか。
お宮参りのような伝統行事というのは、地方によってしきたりが違ったり、時代とともに扱われ方が変わってきたりすることもあり、絶対的なルールを示すのは難しいものです。
重ねて言いますが、お宮参りで大切なのは、生まれてきた子への感謝と幸せを祈り願うこと。その当然の想いを形にする行為が、日本の文化を守り受け継いでいくことにもつながるのなら、言うことはありません。
赤ちゃんが神様に、家族に見守られながら健やかに成長していってくれるよう、心に残るお宮参りとなることを願っています。